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パーキンソン病の診断・治療

【疾患概念】

パーキンソン病は中脳の黒質ドパミン神経細胞、橋の青斑核ノルアドレナリン神経細胞が中心に障害される神経変性疾患です。神経変性は全身の自律神経機能も障害し、脊髄、脳幹、大脳まで広範囲に広がる。

【原因】

90%以上が孤発性だが、5~10%程度は明確な家族歴があります。家族性パーキンソン病の場合、日本で最も頻度が高い遺伝子はparkinです。この遺伝子に変異がある場合、常染色体劣性遺伝形式であり、若年発症、抗パーキンソン病薬に対する反応性が良好、ジストニアが目立つという特徴があります。

【疫学】

2009年に報告された日本での疫学調査より、罹患率は10~18人/10万人・年、有病率は100~180人/10万人程度であると推定されています。平成28年度の難病受給者は12万7千人であり、有病率を考慮すると日本では概ね20万人程度の患者がいると予想されています。日本では女性に多い傾向あります。加齢が発症リスクに関連しており、50代から有病率が上昇し始め、年齢とともに増加します。難病受給者の約6割は75歳以上です。

【症状・兆候】

四大症状として以下の特徴があります。①安静時振戦:じっとしているときに手足のふるえが出現(一側上肢あるいは下肢で発症)、②寡動:動作がゆっくりになる、字がだんだん小さくなる(動作緩慢)、表情の変化が乏しくなる(仮面様顔貌)、③姿勢反射障害:前傾姿勢となり、転びやすくなる、④筋強剛(固縮):受動運動に対し、関節の歯車様または鉛管様の抵抗がみられます。歩行障害に関しては②無動及び③姿勢反射障害による症状として、歩こうとすると足がすくみ(すくみ足)、小刻みで歩く(小刻み歩行)、歩き出すと前のめりになり、止まらなくなる(加速歩行)を認めます。

 嗅覚障害(匂いの識別が困難となる)、レム睡眠行動異常症(睡眠中に悪夢に対応する形で大きな声を出し、怖がる、隣で寝ている人を蹴るなどの行動がでる)、便秘などはパーキンソン病の運動症状が出現する以前より認められる症状です。自律神経機能障害は便秘以外にも、起立性低血圧(立ち眩み)、排尿障害(頻尿)、異常発汗(脂漏性皮膚)なども認めることがあります。幻視・幻聴を合併することもあり、内在性のものと薬剤誘発性のものがあります。痛みを訴える頻度も高く、筋骨格系の異常によるもの、ドパミン不足によるものなどが原因として考えられています。

【検査】

一般的な採血検査や髄液検査では明らかな異常は認めません。頭部MRI画像では明らかな異常はないが、パーキンソニズムをきたす器質疾患や非典型パーキンソニズムの除外診断に有用です。機能画像検査であるドパミントランスポーターシンチグラフィー(ダットスキャン)、123I-MIBG心筋シンチグラフィー、脳血流シンチは補助診断となります。ダットスキャンで取り込みが低下した場合、黒質線条体系の障害によるパーキンソニズムと判断できますが、確定診断はできません。123I-MIBG心筋シンチグラフィーで心臓交感神経の脱落を認める場合はパーキンソン病の可能性が高くなります。ただし、薬剤の影響や末梢自律神経が脱落するような疾患は結果に影響を与えるため、解釈に注意が必要です。

【治療】

抗パーキンソン病薬に対する反応性は高いです。早期から治療介入することで、病気の進行を遅らせることができる可能性が指摘されています。最も有効性が高い治療薬はL-ドパ製剤であり、継続性も高いです。しかし、半減期が短く、長期に使用し投与量が多くなると運動合併症が問題になります。ドパミンアゴニストは半減期が長く、運動合併症の発現は低いが、幻覚、浮腫、眠気、衝動制御障害などの副作用が問題となります。モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬、抗コリン薬、アマンタジン、ゾニサミド、イストラデフィリンなどの補助薬として用いられます。運動合併症により経口薬剤のみで調整が難しい場合は、経腸的L-Dopa持続的投与療法や脳深部刺激療法などのデバイスを用いた治療も行われることもあります。

【予後】

多くの患者様は10年以上経過しても自立歩行は可能です。しかし、認知症の合併、幻視幻覚の出現、転倒による骨折などは予後不良因子として報告されています。嚥下機能障害による肺炎は生命予後に関わる症状です。

 

【重症度】

Hoehn-Yahrの重症度分類が世界標準として用いられています。症状がない場合は0度、片側のみはI度、両側に症状はあるが、姿勢保持反射障害がない場合は2度、姿勢保持反射障害が出現した場合は3度、高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能は4度、介助なしにはベッドまたは車いすは5度です。生活機能障害度分類(1度:日常生活、通院にほとんど介助を要しない。2度:日常生活、通院に部分介助を要する。3度:日常生活に全面的介助を要し、独立では歩行起立不能)もちいられています。

Hoehn-Yahrの重症度3度、生活機能障害度分類2度以上の重症度であれば医療費助成の対象となります。また、重症度を満たさなくても一定以上の医療費がかかった場合にも対象となります。定期的に主治医に診ていただき、条件を満たしているかご相談ください。

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