メニュー

糖尿病

【糖尿病について】

インスリンの供給とインスリン必要度のバランスが崩れ、インスリンの分泌不足(インスリン分泌不全と呼ぶ)、または標的組織におけるインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性の増大ともいう)によって、インスリンの相対的な作用不足をきたすと、血糖値が上昇します.インスリンの作用不足により高血糖をきたすだけでなく、体内の脂肪やたんぱく質の分解が亢進し、その程度が強いと痩せやケトン体産生(ケトーシスやケトアシドーシス)をきたします.

糖尿病は、インスリンの相対的な作用不足が持続することにより慢性的な高血糖をきたす疾患であるが、その成因は単一ではなく、さまざまな原因によって発症する「症候群」です.

 

高齢者の糖尿病では、若年者と比較して異なる点がいくつかり、注意が必要です.高齢になると糖尿病の罹患率は増加し、その大半は2型糖尿病です.ただし2型糖尿病と考えられていた患者の血糖コントロールが悪化した場合、緩徐進行性1型糖尿病の可能性も考えられるため、抗GAD抗体の測定が求められます.高齢者糖尿病では、食後高血糖や低血糖を起こしやすいという特徴があり、低血糖による悪影響(うつ、QOL低下、認知症など)が出やすいことから注意が必要です.

高齢者糖尿病では老化という要素が加わることにより、高齢者に特有な老年症候群(フレイル、サルコペニア、ADL低下、認知機能低下・認知症、誤嚥、尿失禁、便秘、低栄養、転倒・骨折、骨粗しょう症・変形性関節症、褥瘡。視力障害)の合併例が多くなります.これらはQOLにも大きく関与してくるため、高齢者糖尿病の管理において、老年症候群の合併を阻止することは非常に重要なこととなります.

【疫学】

日本では、糖尿病が強く疑われる人は約1,000万人以上いるとされています.特に40歳以上で増え、高齢になるほどリスクが上がる.家族に糖尿病がある方、肥満、運動不足の人は注意が必要です.

【主な症状】

初期は症状がないことが多いが、進行すると次のような症状が現れる.

1. のどが渇く (血糖が高くなると、体が水分を欲しがる)

2. 尿の回数が多い (高血糖により尿量が増える)

3. 体重が減る (インスリン不足で栄養が吸収されず痩せる)

4. 疲れやすい (エネルギー不足のため体がだるくなる).

 

【検査と診断】

【糖代謝異常の判定区分と判定基準】

  1. 早朝空腹時血糖値126 mg/dL以上
  2. 75g OGTTで2時間値200㎎/dL以上
  3. 随時血糖値 200 mg/dL以上
  4. HbA1c が6.5% 以上

→A ~ D. のいずれかが確認された場合は「糖尿病型」と判定される.

 E.早朝空腹時血糖値110 mg/dL未満

 F.75g OGTTで2時間値140㎎/dL未満

→E およびF. の血糖値が確認された場合には「正常型」と判定する.

 上記「糖尿病型」「正常型」いずれにも属さない場合は「境界型」と判定する.

 

 

【糖尿病の臨床診断のフローチャート】

初回検査

◎血糖値とHbA1cともに糖尿病型 

糖尿病と診断

 

◎血糖値のみ糖尿病型   

なるべく1カ月以内に再検査

血糖値とHbA1cともに糖尿病型 →糖尿病と診断

血糖値のみ糖尿病型  →糖尿病と診断

HbA1cのみ糖尿病型 →糖尿病と診断  

いずれも糖尿病型でない →糖尿病疑い,

3-6カ月以内に再検査      

 

◎HbA1cのみ糖尿病型   

なるべく1カ月以内に再検査

血糖値とHbA1cともに糖尿病型 →糖尿病と診断

血糖値のみ糖尿病型  →糖尿病と診断

HbA1cのみ糖尿病型   →糖尿病の疑い 

いずれも糖尿病型でない →糖尿病の疑い

3-6カ月以内に再検査  

 

 

【高齢者糖尿病の血糖コントロール目標】

高齢者の糖尿病では、「血糖値を下げすぎない」ことがとても重要です.若い人と違って、高齢者は低血糖による転倒・骨折・心筋梗塞・認知症悪化などのリスクが上がるため、その人の健康状態や生活状況にあわせて、目標をゆるやかに設定します。

 

高齢者を3つのグループに分けて考えます

群:元気な高齢者:

→認知症なし・日常生活も自立. 

    目標HbA1c 7.0%未満

群:やや支援が必要

→認知症や身体機能の低下があり一部介助. 

    目標HbA1c 7.5~8.0%未満

群:介護が必要

→認知症中等度以上・日常生活に全面介助.

    目標HbA1c 8.0~8.5%未満

※ただし,インスリンやSU薬(低血糖を起こしやすい薬)を使っている場合は、HbA1cが6.5%未満にならないよう注意が必要です.

 

血糖値の目安 (SMBGする場合)

空腹時血糖:目標範囲 (100~150mg/dl)

食後2時間血糖:目標範囲 (150~2000mg/dl)

 

 

【治療】

糖尿病は、食事・運動を基本に治療しますが、それだけでは血糖値が下がりにくい場合には、お薬を使って血糖値をコントロールします.お薬には大きく分けて次の2種類があります.

(1)経口薬

 1日1〜2回の内服で血糖値をコントロールします.

飲み忘れに注意する必要があります.腎臓・肝臓の機能によって使用制限があることもあります.

 

主なタイプと働き

  • ビグアナイド系:肝臓での糖の産生を抑え、筋肉で糖を取り込みやすくする.
  • DPP-4阻害薬:インクレチンというホルモンを増やし、食後の血糖上昇を抑える.
  • SGLT2阻害薬:腎臓から糖を尿として出して血糖を下げる.
  • スルホニル尿素薬 (SU薬):すい臓を刺激してインスリンを出させる.
  • α-グルコシダーゼ阻害薬:小腸での糖の吸収をゆるやかにする.
  • グリニド薬:食事の後だけインスリンを出すように刺激

 

 

(2)インスリン療法(注射)

すい臓の働きが弱くなってきた場合、体の外から直接インスリンを補う治療.

 

インスリン開始前の準備

・血糖自己測定 (SMBG) の指導・実施

・食事指導・カーボカウントの導入

・患者の理解度・生活パターンに応じてインスリン療法を選択

 

<インスリン治療の導入のタイミング>

・HbA1cが9%以上で飲み薬が利かない時

・空腹時血糖250㎎/dl以上,随時血糖300㎎/dl以上の時

・糖尿病の症状 (口喝,多飲,体重減少など) が強い時

・1型糖尿病やインスリン分泌が低下している場合

→空腹時Cペプチド0.5ng/ml未満

・妊娠糖尿病や妊娠中の血糖管理

・急性期合併症またはストレス下

→糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、感染症、心筋梗塞、手術、ステロイド大量使用時

・慢性合併症進行例

→腎機能低下で経口薬が使用できない場合.

 網膜症進行により厳格な血糖管理が必要とされる場合.

 

インスリン製剤の種類と作用時間

  • 超速効型:作用発現 (約15分), 作用時間 (3-5時間) , 食後血糖のコントロール
  • 速効型:作用発現 (30分), 作用時間 (5-8時間) ,食後血糖+追加投与
  • 中間型:作用発現 (1-2時間), 作用時間 (12-16時間) , 基礎インスリンとして使用
  • 持効型(超長時間):作用発現(1時間程度), 作用時間 (24-36時間) ,基礎インスリン
  • 混合型:作用発現 (超速効型+中間型混合), 作用時間 (作用時間は成分依存) ,朝夕2回打ちに便利

 

投与方法(導入)

  1. 基礎インスリン (Basalのみ)
  • 持効型インスリン1日1回 (例:グラルギン10単位から)
  • 主に2型糖尿病で内服薬追加治療として
  1. BOT (Basal supported Oral Therapy)
  • 内服薬+基礎インスリン1回
  • 初期は10単位程度から、空腹時血糖をみて2単位ずつ増量
  1. 強化インスリン療法 (Basal-Bolus)
  • 基礎+食直前インスリン (超速効型)
  • 1型糖尿病、または厳格管理が必要な2型糖尿病
  • 血糖パターンに応じて朝昼夕の3回+就寝前の基礎インスリン
  1. 混合型インスリン療法
  • 1日2回朝夕投与
  • 注射回数を少なくしたい、自己管理困難な患者に適する

 

血糖自己測定と目標値 (日本糖尿病学会推奨)

・空腹時血糖:目標範囲 (80-130mg/dl)

・食後2時間血糖:目標範囲 (180mg/dl未満)

・HbA1c:目標範囲 (7.0%未満,個別化あり)

 

インスリン治療時の注意点

 ・低血糖:最も注意すべき副作用。症状 (冷汗、動悸、ふらつき) への理解が必要

 ・体重増加:過剰インスリンによる過食傾向にも注意

・注射部位のローテーション:脂肪萎縮や硬結の予防

 

【食事療法】

・腹八分目とする.

・食品の種類はできるだけ多くする.

・脂質は控えめにする.

・食物繊維を多く含む食品 (野菜、海藻、きのこなど) をとる.

・朝食、昼食、夕食を規則正しく.

・ゆっくりかんで食べる

・ごはん、パンの食べすぎに注意する.

・お菓子・ジュースはできるだけ避ける.

 

【運動療法】

・ウォーキングは1日30分を目安に.

・ストレッチや軽い筋トレもおすすめ.

・無理なく、継続できる運動を選ぶ.

・食後30分~1時間後の運動が血糖値改善に効果的.

 

【合併症と対策】

高齢者糖尿病では、高血糖ならびに低血糖が認知機能低下や認知症発症リスク増大を引き起こすことが報告されており、その結果、血糖コントロールをより不安定にさせます.高齢者の低血糖では、発汗、動悸、手のふるえなどの自律神経症状が減弱するため、無自覚性低血糖や重症低血糖を起こしやすくなります.高齢者の低血糖はうつ、QOLの低下、転倒・骨折の誘因など様々な有害事象を引き起こすことから、適宜、糖尿病治療薬の量や種類の変更が求められます.

・血糖コントロールが不十分な状態では著しい高血糖を呈することもあります.著明な高血糖に高度の脱水兆候を伴った場合は高浸透圧性高血糖状態の可能性あります.高齢者は脱水に陥っても口喝などの自覚症状が軽度であるため、水分補給が遅れることもあり十分注意が必要です.

・糖尿病と加齢はいずれも免疫機能を低下させるため、高齢者糖尿病では肺炎、尿路感染症、敗血症、結核などにかかりやすくなります.

・感染予防として良好な血糖コントロールと、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種をすることは望ましいです.

・慢性合併症としては、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病末梢神経障害、糖尿病足病変、糖尿病大血管症、歯周病、認知症、骨粗鬆症、うつ、サルコペアなどの併発を認めることから、定期的な評価を行うことが重要です.

 

【専門医への紹介の適応とタイミング】

・1型糖尿病・妊娠・二次性糖尿病

・糖尿病急性合併症の出現: 糖尿病性ケトアシドーシス (DKA)

・HbA1c 9.0以上が2回以上または断続的に持続

・頻回低血糖などコントロール不安定

・インスリン治療の導入時

・慢性合併症の詳細な評価・治療

・療養指導、フットケア

・教育入院

 

※我が国では1000万人とされる糖尿病患者診療の中心は非専門医であるかかりつけ医が担っている.生活習慣の変化や、罹病期間の長期化とともに血管管理が不良になり、多彩な合併症および併存症が出現するため、特に上記の場合には糖尿病専門診療科へ紹介が必要となります.

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME