てんかん
【てんかんについて】
てんかんとは、脳の中で電気の信号が一時的にうまく流れなくなり、「発作」とよばれる症状がくり返し起こる病気です.生まれつきの人もいれば、けがや病気がきっかけで起こる人もいます.てんかんは正しい治療を続ければ、多くの人が学校や仕事など、ふつうの生活を送ることができます。
【疫学】
てんかんは特別めずらしい病気ではなく、100人に1人くらいがかかると言われています.子どもから高齢者まで、どの年齢でも起こる可能性があります.日本でも多くの人が治療を受けながら生活しています.
【症状】
てんかんの症状は人によってさまざまです。急に意識を失って倒れる発作だけでなく、ぼーっとする、体の一部がピクピク動く、変な感じがするだけの発作もあります.必ずしも毎回同じ形で起こるとは限りません
【生活上の注意点】
てんかんがある方は、毎日の生活リズムを整えることがとても大切です.夜ふかしや寝不足、強いストレス、飲酒は発作を起こしやすくなるため注意しましょう.お薬は自己判断でやめず、毎日決められた通りに飲むことが重要です.発作が起こる可能性がある間は、高い所での作業、水の近くでの作業、浴槽入浴、揚げ物料理は十分注意する必要があります.
【検査・診断】
検査には、脳の電気の状態を調べる脳波検査や、脳の形を見るMRI検査などがあります.これらの検査は痛みがなく、安全に行えます.検査結果と症状を合わせて、てんかんかどうかを判断します.
1回目の脳波検査で発作波が見つかる割合は約30-50%、2回目だと約60-70%、3回目以上では約80-90%と検出率が高くなります.てんかん発作波は常に出ているわけでないため、1回の検査で異常がなくても、てんかんは否定できません.
てんかんの診断では、「どんな発作が、いつ、どのように起こったか」を詳しく聞くことが重要です.本人だけでなく、家族や周りの人の話も参考になります.1回の発作だけでは、すぐに診断できないこともあります.
【てんかんの分類について】
てんかんは、2017年の新分類「どんな発作が、脳のどこから起こるか(発作の起始部位)」によっていくつかの種類に分けられます.これは、治療のしかたを決めるためにとても大切です.大きく分けると、脳の一部から起こる発作と、脳全体から同時に起こる発作があります.情報不足時には起始不明を許容しております.
旧分類(~2016年頃)では発作の広がり方により分類していました.全般発作、部分発作、単純あるいは複雑部分発作など、情報不足時も無理に分類していました.
① 焦点起始てんかん
これは、脳の一部分から発作が始まるてんかんです.体の片側だけが動いたり、急に変な感じがしたり、ぼーっとして反応がなくなることがあります.意識が保たれる場合(旧分類:単純部分発作)も、なくなる場合(旧分類:複雑部分発作)もあります.発作が広がると、全身がけいれんすることもあります.
② 全般起始てんかん
これは、脳全体から同時に発作が起こるてんかんです(旧分類:全般発作).急に意識を失って全身がけいれんする発作や、数秒間ぼーっとして動きが止まる発作などがあります.本人が発作に気づかないこともあり、子どもに多いタイプです.
③ 発作の形による分け方
てんかんは、発作の見た目でも分けられます
・全身がガクガクする「けいれん発作」
・一瞬ぼーっとする「欠神発作」
・体の一部がピクピク動く発作
・急に力が抜けて倒れる発作
などがあります.同じ人でも、いくつかの発作が起こることがあります.
④ 原因による分け方
てんかんの原因がはっきりしている場合もあります。生まれつきの体質、脳のけが、脳の病気などが関係することがあります.一方で、検査をしても原因がわからない場合もあり、それはめずらしいことではありません.病因分類の進化で、特発性は遺伝性へ、症候性は構造的/代謝性/感染性/免疫介在性へ、潜因性は不明へ変更されました.
【治療】
初回発作症例の5年以内での発作出現率は約35%と低いですが、2回目の発作後の1年以内の再発率は73%と高くなります.その為、初回発作時は抗てんかん薬の治療は開始しないことが多いです.しかし、初回発作でも神経学的異常、脳波異常、脳画像病変ないしてんかんの家族歴がある場合は、再発率が高く治療開始を考慮する必要があります.
一方、若年者に比較して高齢者では初回発作後の再発率は66-90%と高いことから、初回発作後に治療開始することが多いです.
治療の中心は、毎日飲む抗てんかん薬です.多くの人は薬で発作をおさえることができます.薬の種類や量は人によって違い、医師が調整します.薬で効果が出ない場合、他の治療を考えることもあります.
てんかんと女性
抗てんかん薬を服用している女性から出生した児の奇形発生頻度は4-10%程度であり、一般人口の場合の頻度2-5%と比べでおおよそ2-3倍高いです.奇形の種類については、口唇裂、口蓋裂、心奇形、二分脊椎との関連が指摘されています.妊娠の可能性がある女性には、適切な抗てんかん薬等を使用し日頃より適切な管理をすることで一般女性と同程度のリスクで出産することができます.
抗生剤使用時の注意
・フルオロキノロン系(例:レボフロキサシン、シプロフロキサシン)
・カルバペネム系(例:イミペネム)
→ 発作のリスクを増加させる可能性があります。
・ペニシリン系およびセフェム系(例:セフトリアキソン)
→ 高用量や腎機能低下時に発作を誘発する可能性があります。
後発医薬品への切り替えに関して注意
発作が抑制されている患者様では、服用中の薬剤を切り替えないことが推奨されています.これに関してエビデンスはありませんが、先発医薬品と後発医薬品の切り替えに際し、発作再発、発作の悪化、副作用の出現が報告されています.
【自動車運転について】
てんかんがある方は、発作が起こると、急に意識を失ったり体が動かなくなったりすることがあります.運転中に発作が起きると、とても危険で、自分だけでなく周りの人の命も守れなくなります.そのため日本では、一定期間、発作がないことが運転の条件になっています.一般的には、少なくとも2年間発作がないことが大切です.この期間は、安全を守るために運転を控える必要があります.薬をきちんと飲み、発作が安定しているかを医師と一緒に確認しながら、運転再開を考えていきましょう.
てんかんと診断できない初回発作では、一定期間(3-6カ月)運転しないように指導しております.
医師が、1年間の経過観察の後「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化の恐れがない」旨の診断を行った場合は運転可能となります.
医師が、2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化の恐れがない」旨の診断を行った場合は運転可能となります.
注意:運転に支障が生じる恐れがある状態で運転し、その影響で正常な運転が困難状態となって死傷事故を起こした場合には、業務上過失致死傷罪よりも重い罰則が適用されます.
免許の許可
主治医の診断書もしくは臨時適正検査に基づいて公安委員会が行います.不明な点は都道府県運転免許センター内に設置されている「運転適性相談窓口」に尋ねてください.
